|
施設内の移動を制限されていた私たちでしたが、係員にお願いして私は施設内を回ることにしました。大きな娯楽施設でしたから1時間以上歩いた気がします。あちこちでしゃがみ込む生徒の姿がありました。皆不安そうな面持ちでした。出会う度に「先生たちは向こうにいるから集まって」と声をかけると、生徒は少し安心した様子で歩き始めました。「歩きながら仲間がいたら声をかけてね」と伝えると皆「はい」と答えてくれました。
施設内を全て歩いたつもりでした。それでも集まったのは3分の2程度。残りの生徒の姿は見当たりません。後にわかったことですが、残りの生徒たちは一足先にバスに戻っていました。その状況がわからなかったのは、先行してバスに戻っていた先生との電話が、なかなかつながらなかったことが原因でした。
集まってきた生徒たちは、同級生の顔を見ると皆笑顔を取り戻し、何が起きているのかわからないながらも声を掛け合いながら施設からの指示を待ちました。
最初の地震発生からどれくらいの時間が経ったでしょう。あんなに晴れて暖かかったのが嘘のように、あたりは急に雲に覆われました。冷たい風が吹き始め、そして突然、雨が降り始めました。寒がる生徒たち。快晴の一日、のはずでしたから、もちろん傘を持っている生徒などいるわけもありません。施設の人がくれたゴミ袋を切り裂き、どうにか雨に耐えながら「自分たちはなぜここから動くことができないのだろうか」と考えたりしていました。
そして「上着をバスの中に置いて行っていいよ」と言ってしまったことを後悔していました。
|